どこかで蝉の声が聞こえる。


蝉の声が聞こえると、夏がやってきた気分になる。でも、私達学生にとっては夏が近づくって事で。要するに期末が近づいたと言うことになる。


特に中学3年生の夏は大嫌いだ。受験だー受験だーってうるさい先生。塾だー塾だーってうるさい親。夏休みが夏休めねぇになってしまうのが中3の宿命だ。それに私はこの学校では風紀委員の委員長をしている。その仕事だって目が回る程なのに勉強なんてやってられるわけ無い。





先輩」
「何かね恭弥君?宿題でも聞きに来たのかね?」
「キモ」
「う、うるさいな!ジョークよ!ちょっとはノリなさいよ!」
「バカらしい」
「言ったなこのバカ恭弥!!」
先輩が言っても全然バカにされてない気がする」
「わぉ、言うようになったね」



私はいつもの風紀委員室兼応接室の高級ふわふわソファーで仕事をしていたら、恭弥君がいつの間にか現れていた。まったく、後輩はちゃんと授業出た方がいいのに。
私と恭弥君同じ風紀委員で仲良くしてる事もあり、先輩後輩関係でもあり、軽くジョークを交わす仲でもあった。



先輩」
「んー」
「疲れた」
「・・・だから?」



丁度放課後のチャイムが鳴り止んだ頃、恭弥君がめずらしく弱音を吐いた。確かに昼からぶっ続けで仕事をやっているから疲れるのもわかる。でも、恭弥君は絶対よからぬ事を考えてるから、冷たく答えた。



「あ、ねぇ。恭弥君恭弥君」
「一回呼べば聞こえるよ」



ふっと思い出した事を恭弥君聞こうと思い、書類を見ている恭弥君の名前を連呼してたら、注意された。私先輩なのに。



「恭弥君」
「何」
「何で私の事先輩って呼んで他の先輩は先輩って呼ばないの?」
「・・・・・別に」
「そ」



改めて一回呼んで要件を言った。だって、すっごく気になるんだもーん。それなのに恭弥君は一言、『別に』ってやっぱりちょっと冷たすぎない?



私はふあふあ椅子から立ち上がり、恭弥君の隣りに座った。恭弥君は何の反応も見せず、黙々と書類チェックを進めていた。



「ねぇ。私のこと嫌い?だから先輩って呼ぶの?」



私の思いがけない一言に今日はじめて驚いた顔を見せる恭弥君。



「何でそうなるの」
「だって。恭弥君私だけ先輩って呼んで・・・。何か距離感があるっていうか。どうせ私以外の人には名前で呼んでるんでしょ?」
「誰が言ったの。そんなくだらない事」
「女の勘ですぅー」
「・・・・」



あ、ごめん、やっぱりさっきのキモ過ぎた?

恭弥君俯きながら黙り込んでしまった。



「恭や・・・ぬぇっ!」
「もう少し色っぽい声出せないかな?」
「ちょ、ちょちょちょ、恭弥君!君はいったい人の膝を何だと思「膝枕。疲れたから寝かせて」え?私寝ていいって言ってないよ!ねぇ!恭弥君!?」



いきなり人の膝に頭を預けたと思ったら眠いから寝る!?先輩の事なんだと思ってるんだ!



「・・・・・・・よ」
「え?」



膝の上の恭弥君が小さな声で何かを呟いた。



「他の人なんて名前知らないよ。呼んだことも無い。の事好きだし、本当にちょっとだけ尊敬してるから先輩って呼んでる。じゃ、おやすみ」



言い終えるとすぐに目を閉じ整った呼吸をしながら眠りについた。



ちょ、今の何?もしかして・・・・・






膝上の呟き






(告白ぅぅぅぅぅう!!!!!)(うるさい。)(いたっ!トンファーで叩かないでよ!)

080923