目の前には綺麗で広大海。
今はすでに黄昏時。
「おっきいさぁー」
久しぶりに来た海。
たぶん1年ぶりだ。
「・・・アレ、何で泣いてるんだオレ」
波音が耳に響く。
でも、やわらかな波はあの日の記憶を呼び戻す。
DOLLS
一年前。オレは任務で海が近い町にいた。
そこでと出会った。
は両親の宿屋を手伝っていて、今までにないストライク!!を出した女の子だった。
人が良くて、明るくて、みんなに優しいはとてもかわいかった。そしてある日、オレはから告白をされた。
そして頬を赤く染めながらオレらはキスもした。
キスの時テレて笑ったはかわいくて愛しいくてもう一度抱きしめた。
でも、本気にはなれなかった。いや。本気になれないと嘘をついていた。オレはいずれはブックマンになる。これ以上一緒にいると嘘も本当になってしまいそうで怖かった。
裏の歴史を記録する彼らに心はいらない。
「明日か」
明日、ここを出る。
任務も無事終わったし、もうここにいる理由が無くなった。
ある一つのことを残しては。
「ー。散歩行こうさぁー」
「散歩??いいよー!でも、何で??」
「う〜ん。ちょっとさぁー」
気付いてなかったがオレが無意識に悲しい顔をしたのをは見過ごさなかった。
「ちょっと、ラビ?何があったの?海辺まで連れ出してさー!」
隣りでは手を後ろで組みながら、顔を膨らまして言った。
オレは偽りの愛情を注いでいたのに最後の最後まで何でそんなに愛しく感じてしまう?自分でも分からない。そして偽りの愛情はも本当の偽りかも分からなくなって来た。
「ラビ!!見て見て!」
振り向いたらがいないくなったと思ったらしゃがんで何か書いていた。
覗いて見たら砂浜にオレの名前との名前があった。
そして書いた本人を見たら子供みたいに笑った。
「あんな、。実はさ、オレ・・・・」
なんて事だ自分でも分かる位歯切れが悪い。
は立ち上がり、ぴっと人差し指で俺に向かって「男の子ならちゃんとしなさいっ」と真面目な表情でありながらやっぱり優しい雰囲気を漂わせながら言った。
「実はオレ、もう帰らないといけないんだ。」
一瞬だがいつものの雰囲気が、空気さえもが変わった気がした。
「え。えーっと・・・・。あ、何言ってんのよー!本当に信じ「本当なんだ」」
「うそ。。。。」
はオレから目線をそらした。当然だろういきなりこんな事言われたら誰でもそうする。でも、やはり頭で納得しても心の隅ではすごく悲しい自分がいた。
「・・・・ねぇ、あたしじゃダメなの」
はまっすぐオレを見た。その瞳は吸いこまれそうな漆黒の色。いつも優しく見てくれた瞳。だがその瞳もどんどん悲しい色に変わっていった。
「もう好きじゃないの?」
いつも強気なが震えてた。やっぱりそのまま黙ったほうが良かった。自分は情けなさで手の震えを一生懸命とどめた。
「ねぇ。何も言わないの?」
拳を握りしめ目には涙をこらえていた。
「・・・どこも行かないで。一人にしないでよ!!」
はオレにしがみついて泣いた。
オレはを見れなくて。
息もできないくらい辛いくて・・・。
「ゴメン。」
はしがみ付いて顔を見せないようにしていたが、いきなり背伸びしお互いの唇が触れ合った。これが最初で最後の悲しいキス。
足元にはさっき書いた二人の名前が静かに波にさらわれた。
そしてはオレから離れていった。最後に「大好きです」といつもの笑顔を向けながら。そしてそれが最後のとの記憶。
(ねぇ。もし君にオレの声が届くなら・・・。ありがとう。と届けて)
080914修正