黒い。

暗い。

目が一切の光を遮断しているのか。自分でも目を開けてるのか開けていないのか分からない世界。かっこよく言えば『闇』が目の前に広がっている。



そっか、私死んだんだ。短い人生だったな。
まだ15だったのに・・・
高校にすら入ってなかったのに・・・
彼氏だってまだ一度もいなかったのに・・・




心の中から自然と出てくる言葉達。後悔と諦めから来る心の声。でも、不思議と涙は出なかった。てか、涙なんて暇すら与えてくれなかった。まったく、神様もせっかちな事だよ。少し位お別れの時間を与えてくれてもいいのに。


「神様のバカヤロー!!!!」


何も考えずに叫んでいた私。別に叫んだところで何か変わるわけな「よ、呼び、呼びました、か?」


・・・・・。


そ、空耳空耳!!そう、叫んだって変わ「あ、あのっ!わ、私の事、呼び、呼びました、ですよね?」


私は恐る恐る瞑っていた目をゆっくりとゆっくりと・・・本当にゆっくり開けた。


「あ、あの。大丈夫、ですか?」


目の前には真っ白い天井と、雪が降ったときと同じ空の色をした灰色髪のおどおどしている女の子だった。





-Missing No.01 闇の中の光





起き上がって周りを見回してみた。何だか真っ白い四角い部屋の中の隅っこに倒れていた。


「あ、え、その。誰?」


私はこの部屋に一人しかいないおどおど少女に聞いた。


「あ、すみません。ぼく、ラル、です」
「私は 。よろしく」


私は笑顔でラルの前まで手を伸ばした。ラルは私の手と目を何度も交互に見合って俯きながらもゆっくりと私の手を握り握手をした。


「本題に入るけど、ここは何処?天国じゃないの?ラルって神様じゃないの?私死んだんじゃないの?」


私は川の流れのように凄いスピードでラルに質問をした。


「え、あ、そ、その・・・」
「え!ごめん!吃驚したよね?ゆっくりでいいよ」


ラルはさっきの川の流れトークについて行けなかったらしく、今にも泣き出しそうな顔だったので、私はすぐに質問をやめ謝った。


「だ、大丈夫、です。あ、あの、ぼくは世界を見守っている者です。なので、か、神とか呼ばれてます」
「・・・・・へ?」
「えっと。ですから、世界を見守っている者、ですッ!」
「・・・・・・。ごめん話が分からない」


おそらく私は今。生まれて初めてって位のアホ顔をしているんだろう。何、世界を見守る者って。私知らないよそんな職業。ってか聞いたことも無いよ。


「世界は、いっぱいあるんです。さんの、く、暮らしていた世界だけじゃないんです。ぼくは、この世、世界を見守っていますが、ぼくみたいな者はひとつの世界に、ひ、一人は必ずいます」
「へぇ、じゃあ此処は何処で何で私は此処に居るの?」


私はこの真っ白な必要品しか置いていない部屋をゆっくりと見回し、目線を又ラルに戻した。


「こ、ここは私の、へ、部屋です。おそらく、ですが、世界に歪みが、しょ、しょうじたんだと思います。そしてさんはこ、ここに飛ばされた」
「じゃ、私はどうなるの?」
「残念ですが、さんの世界には、も、戻れません。」
「何でダメなのッ!」
「ひぃっ!」


思わず大声を出してしまい、ライルは吃驚して中央にある机に潜ってしまった。


「ご、ごめんラル!」


机の下で怯えるライルはこちらを見ようとせず、只震えるだけだった。


「ラル。ごめん・・・」
「・・・。さん」
「ん?」
「ぼく、こそ。ぼくこそ、ご、ごめんな、さい」


机の下で方向を変え私の目を見ながらそう言った。


「どうしてラルは何もしてないよ」
「いえ、歪みがしょうじたのはぼ、ぼくの所為、です」
「私は気にしてないよ」
「で、でもッ!・・・」
「ラルの所為じゃ、ない・・・」


嫌な沈黙が流れた。それを破ろうとラルは何か話そうとするけど、開いた口を元に戻した。多分私を見て言うのをやめたんだ。だって私の頬に一筋の涙が流れていたから。


「・・・さん、二つ方法があります」


私は思わぬラルの言葉にパッと顔を上げた。


「でも、さんにとって、と、とても辛い選択です。ひ、一つ目は此処に留まる。でも、ゆ、幽霊としてこの世界を彷徨う事になります。体が無いんで。二つ目は、違う世界に行く。ぼ、ぼくの姉が、その世界を見守ってる者です。お姉さまは見守っる者の中で結構強い力があります。きっと、きっとさんを、助けて、くれると思い、ます」
「・・・・。分かった。女は度胸よね」
「いいのですか?もう二度と此処には戻れません」
「ええ。もういいよ向こうの世界でやってなかったことやるから」
「・・・・分かりました。では、目を瞑ってください」


ゆっくりと目を瞑り、また暗闇が私を不安にさせた。でも、目を瞑ってる間ずっとラルが私の手を握ってくれた。なんだかんだずっとびくびくしてたけど、優しいなと改めて思い、そして感謝した。


いつの間にか体に暖かい膜が私を包むような感覚がして来た。そして眠気も襲ってきた。


さん。ぼくはこれくらいしか出来ませんが、どうかあっちの世界で元気で。あと、これはほんの気持ちですので受け取ってください」


耳からではなく、頭に直接ラルの声が聞こえた。ありがとと言いたくても、もう眠気で頭が回らなくなっていた。根性で口を開いて言ってみたがきっと口パク状態だっただろうが、ラルが微笑んだ気がした。そして私はまた浮遊感を感じたが、今度の浮遊感はまるで海の中でゆっくりと沈んでいくようなそんな気持ちの良い浮遊感だった。






081116 ... back