白い粉のような雪がゆらゆらと降りてきて、既に積もっている雪と一緒になる。 私は全身黒で統一された服に身を纏い、右目には黒い眼帯を付け、ゆっくりと近場のコンビニへといろんな人に同情の目線を受けながら向かった。ちまたで言うコスプレってやつだ。 右手には、まるで晴れていた頃の青空を思い出す様な空色の傘を差しながら、一面白く積もっている道をしゃくしゃくと気持ち良い音と立てながら歩いた。 後ろを振り向くと靴の跡が一列に細長い溝となって出来ていた。 「・・・寒」 寒さのあまり肩を竦めた。ちゃんとマフラーと手袋もしてきたがやはり寒さは身にしみる。既に鼻が赤くなってしまっていた。 「あぁ、何で1番引いちゃったんだろう」 さっきまでの暖かい家での出来事を思い出してため息と共に吐き捨てた。 -Missing No.00 プロローグ 「じゃあ、ちゃん。今からこの服着て買い物して来て」 中学校生活最後のクリスマスパティー。クラス委員長の中田さんの家にクラスのほとんどの子が集まった。みんな美味しい物も食べ終わり、ケーキを食べる前にみんなリビングに集まって王様ゲームをしよう!と言う話になったが、くじ運が悪かったのか早速王様ゲームの最初の被害者となった。 「ちょ、待ってよ。何この服?嫌がらせ?罰ゲームには酷くない?」 「め・い・れ・い・よ」 「うぅ・・・」 王様を引いたこの家の当主中田さん。語尾には今にもハートがついてそうな勢いに私は何もいえなくなった。 しかもその子の手にはどこからとも無く真っ黒で統一された洋服が用意されていた。上はシンプルなタートルネックの長袖セーターで下はミディスカート、なのだが・・・。何この袖とスカートの無駄なフリフリは、これって所謂コスプレっだよね?ってか中田さん、これ系が趣味・・・? 「中田さん、外雪だよ?こんな寒い格好で買い物とか無理だから」 「大丈夫大丈夫!ちゃんとブーツとニーハイ準備するから!しかも、この罰ゲームにみんな賛成しちゃって。ねぇーみんな!」 パーティーに来てる女子や男子がおぉー!!だの、絶対似合うよー!とか言ってくる。 いや、そういう問題じゃないって。ってかお前らそれ以上言ったら殺すわよ!ほんとちょっと助けてよ!!! 同じくゲームに参加していた親友の結衣に視線を送ったが、見事に口パクでがんばれと返ってきた。 ちょっと親友見捨てるなよ!!後で覚えとけ!と結衣にアイコンタクトを送ったが見事に無視された。 「さぁ、今からお着替えの時間よ!この服は私の自慢作なんだから!」 え!手作り!?と突っ込みたかったが、結局私は部屋まで引きずられて着替えることになった。服はすっごく可愛かったんだけど、どうしても私が着ると服が可哀相に思えてくる。 着替えはすぐに終わったもののもっと可愛くしなきゃ!と盛り上がった女子が私に色々とお化粧をし始め、しかもアクセサリはどうする?と言う話も持ち上がり、あれにしよう、これにしようと結局30分以上も椅子にお人形の様に座らされお化粧をされた。お着替え終了後、買い物リストを渡されいってらっしゃーいと皆に見送られた。ごめんね洋服、こんな私に着られて・・・ そして文頭に戻る。 友達の家からコンビには歩いて5分。 雪が降っていると言うこともあって、道にはあんまり人は多くなく、しかもクリスマスと言うこともあってか、こんな格好でいてもそこまで冷ややかな目線を送られず、只こんな寒いのに、あんな格好で出歩いてるなんて・・・的な視線を背中で感じていた。 「えっと、忘れ物は・・・ないね」 コンビニに入るといつもは感じられない暖かさを感じた。切実におでんが食べたくなったのは言うまでも無い。だが、コンビニから出ようと自動ドアの前に立った途端、足が前に出なくなった。もちろん、嫌な雰囲気とかじゃなくて只外の寒さとコンビニの暖かさの差があまりにも激しく外に出たくなくなっただけ。でも、家に戻らないと罰ゲームは終わらない。すっごくコンビニに留まりたかったが、流石に自動ドアの前で立っていると迷惑なので自分の中の悪魔と戦いながらも外へと足を伸ばした。 でも、実際は出なかった方が運命は変わっていたかもしれないけど。 コンビニの目の前は大きな十字路がある。ちょうど家に戻る方の信号が青になっていたので走って渡ろうとしたその時。 大きなトラックを私は目の端で捕らえた。凄いスピードでこちらに向かってくる。一瞬馬鹿でかい音のクラクションが聞こえ、そして目のような大きなヘッドライトが目の前で私を盛大に照らす。体が動かなくなり、眩しさのあまり目を瞑ってしまった。 「・・・ッ!!」 そして私の体に凄まじ衝撃と気持ち悪い浮遊感が襲う。あれ、もしかして私・・・ ハ ネ ラ レ テ ル ? そして私の意識は細い糸が切れるようにプツンと切れ、闇の中へと引きずり込まれた。 081025 ... back next |